ものまちぐらし

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設計事務所で働く、都市計画コンサルタント兼一級建築士。まちづくりのことや激務の中でのちょっとした生活の楽しみについて書いてます。

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多世代って言葉はもはや高齢者とニアリーイコール

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この「多世代」という言葉。

 

この仕事を始めてから、この言葉が本当に嫌いになったのだけど、まちづくりに関わっていると至る所で聞こえてくる。

 

なぜ、嫌いかって言うと、いくつかの記事でも似たようなこと書いてますが、「多世代」という言葉が、何も決めていない言葉だから。

 

世の中に実際に「多世代が集っているスペース」が一体全体どれほどあるのでしょうか?

 

本当に「多世代が生き生きと暮らせるまち」とか、そんなユートピアはあるの?

 

ってことです。

 

その場所、そのまちは一体誰をターゲットにしているのか?それが明確になっていない時に使われる言葉が「多世代」って言葉なんです。

 

たとえば、流山市なんか「母になるなら流山」とか、秀逸なキャッチコピーでシティプロモーションをしているわけです。

www.nagareyama-city.jp

 

もう、明確に「お母さん」をターゲットにしているんです。

 

 

「多世代」は逃げの言葉

ってことで、明確にターゲット層を固めている自治体もいるわけで、多世代は逃げの言葉なわけです。

 

多くの自治体は高齢化が深刻な問題になってます。

そういう自治体の多くはまず高齢者のことを考えなくてはいけません。それは、もうありとあらゆる施策、方針に高齢者に配慮がされた言葉が並んでます。

 

けど、こういう自治体の多くの本音は、「高齢者のことばかりだけでなく、子育て世帯の流入を増やさないとマズイ」ということなんです。

 

かと言って高齢者は無視できん。

ってことで、「多世代」ってワードが出始めるわけです。

 

 

「多世代」に優しいまちに若者は惹かれない

んで、これなわけです。

ぶっちゃけ「多世代ガー」とか言われても、若い世代には全然ピンとこないわけですよ。

 

多世代交流なんてもってのほか。

核家族化が如実に進んでいる昨今においては、まあ子供の教育という面で、親世代より、更に上の世代との関わりは重要かもしれない。

 

けど、親世代は別に上の世代なんかと関わりたくないってのが、大多数の本音なわけですよ。

高齢者とはいわなくとも、上の世代とは散々仕事で付き合いがあるわけだし、毎日気を使ってるわけ。

なのに、自分のマイタウンまで、上の世代と関わるとか、もうメンドーってのがいつわざる若者の本音なんです。

 

高齢者は、まあなんか知らないけど、子供連れて歩いていたら、知らない人でも話しかけてきたり、子供と絡みたがる。

 

「多世代」ワードに惹かれるのなんて高齢者だけ

そういう意味で多世代って、高齢者にしか訴求しない言葉なんですよね。

「多世代」という言葉で若者を呼び寄せるためには、「多世代」がいかに若者にとってメリットがあるか、明確に示してあげること。

 

最近の若者は、「なんで残業しないといけないんですか?」と生意気にも反抗するような若者が取りざたされているように、しっかりと筋が通っていることなのかどうかというのを、本当によく見ている傾向にあります。

 

だから、「多世代が生き生きと暮らす!」とかわけわかんないこと言っている暇があったら、多世代であることを活かしたまちのあり方を明確に伝えることに注力した方がいいんです。

 

けど、今のところ「多世代」ということで思い浮かぶメリットってのは、互助共助の考え方くらいなんですよね。

 

要は、元気な高齢者が子育て世帯を支える(一時預かりとか、子供への昔遊びの教育とか)から、若い世帯も高齢者を支えてね。って感じの考え方。

 

いや、めんどーい!!

 

ってことなんですよ。自分のおじいちゃん、おばあちゃんならいざ知らず、バリバリ働ける、遊べる時期に、だれが好き好んでプライベートで高齢者を支えたいんですか?

 

 

「多世代」は死亡フラグワード

ということなので、「多世代」なんて使い始めたら、そのまちづくりは既に死亡フラグが立ってるって感じです。

 

ですので、「多世代が集うまち●●」とか「多世代交流スペース」とかにはあまり近づかないことをお勧めします。大したまちでも場所でもないことが多いので。

 

 

とはいえ、自治体としても高齢者を無視したまちづくりなんてできない!ってのは、わかります。まち全体で考えた場合、どうしてもいろいろな人に配慮した言葉になってしまうのもわかる。

けど、まずは小さな場づくりにおいては、「多世代」を使うのはやめましょうよ。

 

まち全体の目標も望ましいのは、流山みたいに明確にこの人!ってターゲットを決めるのが面白いと思いますよ。「我がまちで死のう!」みたいなキャッチコピーで、高齢者が豊かに健康に最後まで死ねるようにあらゆる施設、環境を整えたまちがあったら、移住者も増えるし、面白いと思う。

 

でも、それが難しければ、明確にターゲット層を決めずに、暗にターゲット層を匂わすってのも「多世代」って使うよりもいいと思うんですよね。

 

たとえば、「盆栽」をめちゃめちゃ押し出したまちで、毎月のように盆栽コンテストとか、盆栽イベントをやるようなまちがあったなら、ジジイか変わった若い夫婦の流入が増えると思うし、「美少女アニメ」を押し出したまちなら、独身男性の流入が増えると思う。

まあ、これはほんの一例だけど、人ではなく地域の「モノ」、「コト」、「文化」とかに着目してみるのも面白いと思います。できれば、不変のものがいいですけどね。(だからアニメはダメな例でしたね)

 

prmag.dreamnews.jp

 

 これとか、住みたいとは思わないけど、行ってはみたくなりますよね。


佐賀市プロモーションムービー 「W・R・S・B」

 

 

★★★

どうせ自治体なんてどんどん消滅していく傾向なんだから、一瞬でもいいから線香花火のようにあ輝いていこうぜ!って感じでまちづくりをしたいもんです。

 

おしまい!