巷に溢れかえっている大学生が関わるまちづくりプロジェクト。
ぼくも大学生のときはびっしりプロジェクトにかかりっきりでしたよ。
でもね、経験者から言わせて貰うと、この大学生を関わらせる上で社会として真面目に考えていかないといけないことって結構あるんですよ。
正当な賃金が払われない
学生に対して正当な賃金が払われないんですよね。
バイトすれば、そのプロジェクトに関わる学生も、もっと潤うことができるのに、そのバイトの時間を潰させて、作業をさせているのにも関わらず、バイト料があまり支払われない。
これも勉強や研究の一環でしょ?ばかりに結構無理難題の模型や図面、プレゼン資料作成を、大した委託料(バイト料)を与えずに、求めてくるのです。
たしかに勉強や研究の一環では、あるんだけど、こういう態度は建築業界がブラックであることを暗に示しています。
まあ、大学に委託している側もそこまで潤沢な資金があるわけではないのはほとんどではあるし、基本研究室に発注をして、そのあとのマネジメントは研究室の先生に委ねられるので、いくらで委託するかは難しいところではありますが、少なくとも、成果を見て、出来が良ければ成果報酬的なボーナスがあっても良いと思うわけ。
成果を見ると、そこらの企業がやったものより、よっぽど夢に溢れていたり、事細かに分析されていたり、デザインされていたりするアウトプットを見ることもあります。
そういうアウトプットをしたら、正当に評価をしてあげるようにするというのは、学生に対する社会の責務だと思うのです。
大学生への依存
本当、大学生って一生懸命がんばってくれるんですよね。ほとんど無給で、がんばってくれる子もたくさんいる。
こうなってくると、そのまちづくりに関わる行政やコンサル、住民が大学生に依存しはじめるんですよ。
たとえば、この男山団地にある「だんだんテラス」というコミュニティスペース。
これ、関西大学の学生が運営しているらしいのですが、なんと24時間ずっとここにいるとのこと。
ゆくゆくは住民に運営を移行していくことが課題だと考えているようなのですが、じゃあ住民がここに24時間ずっといることをするか?っていうとそんな酔狂な人、なかなかいないですよね。
24時間ずっと学生がここに常駐しているってインパクトがすごいのであって、行っている取り組みとしては割とよくある話。
今では、毎日コミュニティスペースに学生がいて、空いているから、なんとなくうまくいっているように見えるのだけど、住民に移行できたとしても、住民が毎日ここを運営するかっていうとなかなか難しい。きっと週1、2程度しか開くことができないのではないだろうか。
また、大学生がこのスペースにいるからこそ、顔を出すような人もたくさんいると思います。これが、地域の老人が運営するようになったら、果たして人がくるのか、、、
他には大宮東口プロジェクト
この事例もすばらしいのだけど、結構やっていることがハード。
プロジェクトでは、大宮区役所と大宮小学校の敷地を仮想の再開発用地として設定。その中に小学校と公共施設などを配置する計画を学生らがグループに分かれて検討している。コンセプトづくりから模型やパネルまでを制作した後、一般市民が自由に参加できる「パブリックミーティング」でプレゼンテーションを行い、参加者による予備投票と本投票の結果、最優秀作品を選定している。パブリックミーティングは計5開催される予定で、その都度、優秀作品を選定し、学生はその場で得られた意見や評価を持ち帰り、次の回までにさらに案を練り直して次の提案に反映させるため、回が進むごとに提案が進化していく仕組みだ。
これ、毎回模型やパネル更新するのはかなり骨が折れますよ。また、学生が関わっているからグループとかつくれるけど、一設計事務所ではこんなグループをつくって、グループごとに何回も何回も模型やパネルを更新するなんて、なかなかできない。
関わっている学生は、面白くて関わっているだろうから、良いのだろうけど、結構徹夜とかしまくってると思うんですよね。これ。
こういう「大学生」に依存してしまっているまちづくりの事例ってたくさんあるんですよ。
★★★
まちづくりにおいて、大学生を活躍させることは、当たれば話題にもなって、面白いこともできる。
こういう事例をみると、単純にうちの街でも!とか考える行政がたくさんいますが、それが本当に持続的な方法なのか、ただ単発の大学の研究期間だけの取り組みなのかって視点は明確に持っておいたほうがよいです。
おしまい!