ものまちぐらし

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設計事務所で働く、都市計画コンサルタント兼一級建築士。まちづくりのことや激務の中でのちょっとした生活の楽しみについて書いてます。

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いまさら聞けない。熊本大地震の概要と今後の復興方針についてまとめてみた。

The Aso-Ohashi bridge fallen by a landslip of the 2016 Kumamoto earthquakes.JPG
出典:熊本地震 (2016年) - Wikipedia

 

 

4/14夜(午後9時26分)に熊本県熊本地方を震源としたM6.5、震度7地震が起きました。

 
震度7と聞いて、日本中は慌てふためいたことでしょう。
 
震度7?え?熊本大丈夫?」
 
震度7と聞いただけで、幾度となく日本が経験してきたあの悪夢が蘇ります。
 
けど、緊急報道番組で熊本の映像を見ると、意外や意外。
 
「あれ?言うほど被害ないっぽいぞ?死者数が一桁?震度7だよ?」
 
こう思った方もまた多いはず。
 
「ついに、日本は震度7でも耐えられる国になったのか!最強だ!」
 
とか思った人もいるはず。
 
 
 
けど、この地震は余震でした。余震で、震度7とかやばい。
 
4/16 午前1時25分に今度はM7.3、震度6強地震が起こりました。こちらが本震でした。このM7.3というのは、阪神淡路大震災と同じ規模。
 
今回の地震で、大きな地震があって、助かったからといっても、それが本震ではない可能性があるということは、十分肝に銘じておかなければならないと、我々は深く胸に刻むべきです。
 
震度7の余震には多くの建物は耐えましたが、震度6強の本震及びその後の震度6〜5の余震で一気に倒壊する建物が増えました。余震の多さは、4/17時点で、直下型地震の中でも余震が多いとされていた2004年に起こった新潟中越地震をも上回っていたそうです。
 
結果、この記事を投稿している5月1日時点で、死者数は49名になっています。
 
 
 

現地の被害状況

とくに被害がひどかったのは、熊本市内から車で東に20分ほどに位置する益城町(ましきまち)でした。
 

 
益城町という町をこの地震があるまで知らなかった方も多いと思います。ぼくも知りませんでした。
 
土木学会から先遣隊として現地入りした京大の後藤准教授という方によると、「傾斜のある地域で被害率が高く、建物被害が大きいところは地盤の被害も大きい」ようです。(日経アーキテクチュア 2016.04.28号より)
 
 
 
一方で、熊本市内中心部でも建物が倒壊していたようです。多いのは、1階だけ倒壊したような建物。自動車販売店や1階ピロティのマンションが崩れている映像はニュースでもよく見たはず。また、熊本城の石垣や屋根瓦が落下している映像も印象深いです。
 

 
 
 
阿蘇村での阿蘇大橋や高速道路上をまたぐ橋の崩落など、インフラが倒壊している映像も印象に強く残っています。

 
 
 

今後どのような復興を行っていくのか。

復興計画については、国から「東日本大震災の経験を活かして、がんばります!」的なこと以外はまだ言われていないようです。
 
なので、ここでは、現時点(2016年5月1日)でぼくが復興について考えることをまとめてみようと思います。
 
 

①面的な整備は伴わない住宅単体での復興へ

被災者の方々においては、他の地震の規模とか知ったこっちゃないとは思いますが、今回の大地震では、阪神淡路大震災東日本大震災と比較すると、面的な被害が少なく済みました。
 
ということで、東日本大震災の時と同じような、どっかの山を切り崩して新たに住宅地を整備するような、面的な整備の伴う復興はおそらくないでしょう。
 
単体での仮設住宅や災害復興住宅の建設。これがメインになってくると思います。
 
ということで、東日本大震災より大手のゼネコンや設計事務所がいきり立って関わろうとすることは少ないのでは?なんて思っています。
 
ただ、ここで問題になってくるのは、どこにその住宅をつくるか?という問題。
 
上にも書いたように、益城町では被害が大きかったのは傾斜のある地域の模様。高台の方は被害が少なかったようです。
 
ってことは、やはり高台の方につくる方向でいくとは思うのですが、そこに土地があるかどうか?土地があったとしても地権者が売ってくれるかどうか?ここが問題になってきます。益城町の土地事情をよく知らずに書いてますので悪しからず。
 
また、高台への移転は従前コミュニティをいかに維持するかについても重要になってきます。
 
 

②民間賃貸住宅の活用

いわゆる民賃と呼ばれる、この民間賃貸住宅をいかに活用していくか。
個人的にはこれがすごく気になります。
 
 

 

をみると、避難者は3ヶ月後には、12,275人と推計されています。
 
 
おそらく3ヶ月後においても避難されている方はご自宅が全壊または半されていて、かつ他に行き場がないような方。
 
この方たちに仮設住宅及び災害公営住宅を供給することになるかと思うのですが、果たして一律に公営住宅を供給すれば良いのでしょうか。
 
 
 
 
をみると(少し古いですが)、熊本の空き家は13.4%。そして、その空き家のうちおよそ46%(約48,000戸)が賃貸用の空き家となっています。
 
この48,000戸がどれだけ使える空き家なのかはわかりませんが、3ヶ月後の避難者12,275人をゆうに超える数が空き家となっています。
 
これを使う手はないのではないか。とぼくは思っています。
 
 
そして、またまた
 

 

をみると、4/20時点の避難者約9.2万人のうち65歳以上の高齢者は2.4万人であるとしています。
 
これ、実に避難者の約26%です。
 
つまり3ヶ月後の12,275人の避難者のうち26%にあたる約3,192人が65歳以上の高齢者ってことになります。
 
高齢化がめちゃ進行している地方では高齢化率が50%もざらなので、26%という数字は以外と低い!と一瞬思いましたが、おそらく3ヶ月後も避難所に残っている人って、結構高齢者が多いと思います。若い人はきっと自力で住宅見つけてる。
 
ってことで、「最低でも」約3,200人が高齢者であり、実際は12,275人の避難者のうち、半数が高齢者ってこともありえるってわけ。
 
で、ぼくが何を言いたいかというと、この方々に対して、本当に仮設住宅を供給するのが良いのか?ってこと。
 
それよりも既存の民賃を活かして、そこに安く(2、3年間は無料で)住まわせる。そして、地域の高齢者福祉サービス(訪問介護やデイサービスなど)と連携して、高齢者のその後の生活を担保する。
 
ってした方が良いのではないかと思うのですが、どうでしょうか?
 
東日本大震災では、仮設住宅に1戸あたり500万円!なんて話もあります。
 
戸あたり500万も使うのなら、民間賃貸住宅を活用する、そしてその住宅に住むお金を補助する、ってした方が割と経済的かと思うのですが、、、(例えば、家賃5万円の住宅に3年間住まわせても180万円。光熱費などを別途補助したとしても余裕!)
 
 
 
まあ、ここで問題なのは、従前コミュニティをどう維持していくか。機械的に空いている民賃を使えば良い!ってわけではないのが、痛いところ。
 
復興って合理的ではなく、人々の感情に左右されるものなので、なかなか難しいです。
 
なので、民賃を活用する流れになるかどうかわかりませんが、やはり余っているストックを使うのは、合理的のように思うし、経済も回る気がする。
 
 
ぼくが言うまでもなく、県営住宅の活用や民間賃貸の借り上げを進めているみたいですね!
 
 
 
 
 
 
今回の震災で犠牲になられた方においては、心よりご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方においては、心よりお見舞い申し上げます。
 
ぼくも寄付の文字が見えたら、とりあえず寄付!って感じで、寄付するくらいしか、今の所やれることはないのですが、微力ながら、やれることを探し、やりたいと思っています。
 
 
おしまい!
ではっ!