ちきりんさんと木下斉さんの「人口減少社会における地方再生 "世の中を知らない若者の人生を崩壊させるNHKの闇" 」というネット生配信を聞いてみたので、そこで語られていた内容をまとめてみました。
ちなみに、僕の中では超有名なお二人で、それぞれのブログ、Twitter等はいつもチェックしているんだけど、知らない人のために簡単に紹介すると、
ちきりんさんはおちゃらけ社会派ブロガー(chikirinの日記)
木下斉さんは一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス 代表理事/内閣官房地域活性化伝道師(経営からの地域再生・都市再生)
です。
詳しく紹介するのは面倒なので、各ブログやお二人の書籍を見てみてください!
21時から23時過ぎまでお話しされていた大きなテーマは以下の4つ
1.人口減少について
2.東京一極集中と地方再生について
3.過疎地の成功事例に対するメディアの取り上げ方
4.地域おこし協力隊
23時半からのお話しは地方都市の話しでした。
北海道の話までは聞いたのですが、青森の話になってから、木下斉さんの書籍やnote、AIAのメルマガ、東洋経済オンラインの連載等でもよく書かれてあるような話になりそうだったので、0時過ぎくらいで聞くのを断念。というか、0時には寝る主義なので。。。
ということで、0時過ぎまでに話されていた1〜4の内容+地方都市(北海道)の話を以下に簡単に整理してみました。
人口減少について
人口動態には以下2つの動態があります。
自然動態:生まれる人数と死ぬ人数のバランス(今の日本では死ぬ人の数が基本的に上回っており、自然減少が進んでいる)
社会動態:地方で産まれた若者が東京等の大都市の大学や会社に行ってしまう等、転出転入等による増減
それを踏まえて、お二人は以下のように語られてました。
- 地方の衰退って、都会に人が流れてしまって、どんどん過疎化してしまっている(社会減)ように思われがちだけど、実際は自然減で人口が減っていることの方が多い。要は高齢者ばかりいるから、産まれる子供より死ぬ高齢者の数が多いってこと。地方再生を考える上では、そこを冷静にみないといけない。
- これから50年で4500万人減る。この4500万人というのは、北海道、東北、北陸、四国、中国、九州の人口の合計。(参考:次の50年で4500万人減るということ)
- そもそも、大正時代から基本的に地方は社会減の傾向にある。このトレンドは100年単位で起こっている。(chikirinの日記でデータが見れます。)これまで問題にならなかったのは、バンバン子供産んでいて社会減より自然増が上回っていたから。
- この人口減少トレンドの中では、今あるたくさんの自治体を維持させるのは、土台無理な話。自治体を集約させた方がインフラ(水道、ガス、電気、道路等)は効率化され、財政負担の削減につながるのに、すべての自治体を維持させよう!すべての自治体で人口を増やそう!としているのはどこかずれている。
- よくよく見ると自治体は 明治時代に約7万あったのが、今では1,718自治体にまで統廃合されている(参考:市町村数の変遷と明治・昭和の大合併の特徴)。つまり、今まで人口増えていたのにも関わらず自治体を集約させてきたということ。人口減少社会に突入した現在では、なおさら集約させた方が良い。
- ということで、元総務大臣であられた増田寛也氏が、以下の本等で2040年には896自治体無くなってしまう!と煽ったり、東京一極集中のせい!みたいに煽ったりとしているけど、自治体が少なくなっていくのはこれからの時代当たり前の話だし、それは別に東京一極集中が招くものでもなんでもないのに、各メディアもこの増田氏の話に乗っかってしまった。
- そして、人口減少を食い止めるという無茶な努力を全国でし始めてしまった。自然減を補うほど、人が来るようにしようと、各自治体が躍起になっている。
- 人口が減ることは決まっているのだから、いかに自治体の数を減らしていって(集約させていって)、効率的に行政サービスを維持していくか?を考えていく必要があるのに、人口を増やす!とか言ってる場合ではない。
まさにそう。どこの自治体も若い人を流入させたい!ミクストコミュニティだ!とか言うんですが、人口減少に転じる中で、どう近隣自治体と連携を図って、効率的に行政サービスを維持させるか、とかを議論している自治体を見たことがないです。
他の自治体とは全く独自の施策で人口増の戦略を描いているのなら、まだマシだと思うのですが、大体が右に倣えの戦略で人口増を目指そうとしている。これだと、どこも人口増しないですよね。
次に、人口減少の話の流れで、東京一極集中と地方再生についてもお二人は触れられていました。
お話しされていたこととしては以下の通り。
- 東京一極集中と地方再生をリンクさせて、議論することが多いが、本来この二元論で考えることではない。
- 東京に人を奪われなければ、地方は衰退しないのか?といったらそうでもない。社会減よりも自然減が上回っているのだから勝手に衰退していく。
- 地方再生においては、なんでも人口増ばかり議論していて、いかに少ない人口で生産性を高めるかという議論もあるだろう。人が減っても財政等が成り立つことを考えていかないといけない。
- 一方で、東京はこれまでドーナッツ化減少(都心部郊外に人口が流れていた)が、再開発でバンバン都心に高層マンションができていたりする等、近年は都心回帰の流れとなっている。それに伴い、郊外の高齢化問題、医療、高齢者福祉施設の不足が課題となっている。
- また、地方にそもそも若者がいなくなるので、今までみたいに地方から若者も流入してこない。そのため、アジア等からいかに優秀な人を入れていくか?という視点も重要になってくる。
- 要は、二元論ではなく、個別に考えていかないといけない。
これも本当に身にしみる話。ただ、都心部ではアジアに目を向けて〜、ということはまだまだ本気で考えられない状態。都心部も地方と一緒で、「おらが町だけ」精神で、若者の流入を図り、人口増を図っていこうとしていることが多いです。
自治体によっては、若者といっても若年ファミリー層を流入したい、高齢者向けの住宅は他の自治体から高齢者が流れてくる恐れがあるので、あまり積極的につくらせたくない。なんて自治体も多く、まだまだ課題が多いところです。
僕なんかは、単純に都心に近い郊外なんて、あえて豊かに暮らせるシニアタウンとして、ブランディング化を図ることもひとつの方策のように思うのですが、介護保険料の負担等を懸念して、なかなかそういう方策には舵がとれていません。
割と郊外のニュータウンなんかは、歩道が綺麗に広く整備されていて、いろいろな施設に車道をあまり通らずに安全安心に行ける!なんてところも多いと思うんですよね。
もっと、そういうストックの魅力を見出して、押し出すことも必要だと思っているのですが、、、
都心部もどこも同じような施策を考えている中で、先行者優位で独自路線の施策をしていければ、その自治体も存続していくのではないのか?と感じる次第です。
過疎地の成功事例に対するメディアの取り上げ方
ここでは、海士町と神山町と最近話題のまちを事例に挙げて、本当はメディアにはこの部分を取り上げて欲しい!という話をされていました。このテーマは僕も勉強不足で、仕事的にも関わりのない話だったので、ただ単に勉強になりました。
●海士町について
ここは、若い人が移り住んで、事業を起こしているということで、よくメディアに取り上げられている島根県の離島ですね。
そんな海士町について、お二人は以下のように話されていました。(是非、google mapを開いて、海士町の位置を把握しながら読んでいただくと良いです)
- ほっとくと、どこかの国に乗っ取られそうな位置にある。つまり国家防衛、安全保障の観点から人が住み続けなくてはいけないまちなのが海士町。
- メディアでは、自然減はしているが最近では若者が頻繁に流入していて、社会増している点が多く取り上げられており、地方再生のモデル!と祭り上げられている。
- メディアでは都心から流入してきた人が行っている事業や仕事のことを取り上げていることが多い。
- 海士町の塾がある。町だけでなく、島外から先生・生徒が来てたりする。なぜか?島への渡航費、生活費等を海士町が補助してくれる。(これが参考になりそうです。離島から大学へ「町営塾」 島根・隠岐諸島の海士町)
- なぜ、こういう補助ができるのか?税収をみると約2億円しかないのに、予算として46億円もある!?これは地方交付税や国庫支出金等、立地的にも国から多く支援を受けられる。そのため、人口2400人程度の規模であるにも関わらず、それに見合わない大規模な財税規模を有している。
- それが悪いと言っているわけではない。海士町の隣の島である隠岐の島では、海士町と道誉に大規模な財政規模を有しているが、それらの予算を港湾整備にたくさんかけていたりする。海士町はハードの整備よりも、若い人が来ることに対して金を使うことにスイッチし始めた。海士町周辺のまちづくりは結構ひどいことをしている中で、海士町が戦略転換をしたという、そのコントランストをメディアには発信して欲しい。
- 海士町の予算規模は他の自治体とは異なるため、他の地域で真似しようにも、真似はできない。それなのに水平展開(右に倣えの取り組みを)しようとしている。地域は平等に扱われているわけではないということを知っておいて欲しい。
●神山町について
ここは徳島県にある町ですね。高速の光ファイバーのインフラ整備が整っており、使っている人が少ないので、相対的には東京より早い。豊かな自然に囲まれた古民家の中にITのサテライトオフィスを設け、サテライトで働いている人がいる町です。
ここは、ほぼ木下さんが神山町の実情やこれまでの経緯を話している感じでしたね笑
- NPOグリーンバレーの大南さんが20年ずっと頑張ってきたから、今がある。昔からサテライトオフィスやアーティストインレジデンスのような話をしていて、メディアに取り上げられる前までは大南さんは地元から鬱陶しがられていた。地域外の評価がよくなり、地元での評判も上がっていき、役所と話せるようになったのは、ここ2、3年。
- 大南さんは建設会社を経営している方。スタンフォードに留学もしていた。西海岸のスタートアップの会社とのつながりもある。大南さん経由で、ここにオフィスを構えている人もいる。こういう方がいるから、神山町の取り組みができている。他の地域で流用するなんて無理。
- また、空港からレンタカーで1時間でいける立地。ものすごい山奥にあるわけではない。メディアではそんな感じで取り上げられているけど。
- 大南さんは、「発展的過疎」と言っている。人を増やすということを目指しているわけではない。過疎を受け止め、その中でできることを探している。しかし、メディアでは過疎がなくなりつつある的な描き方がオーバーな報道をする。
ちなみに話に出ている大南さんについてはこちらの記事がおすすめ。
【徳島県神山町】「枠組みのない町」を創る- グリーンバレー大南信也 -
地域おこし協力隊について
ここもただただ勉強になりました。
- 1511人いる→3000人に増やす予定。不幸になっている人がかなりいる。自分探しっぽい感じにもなってしまっている。
- 行政の人も、地域おこし協力隊を募集しないといけないから募集しているところが多い。何をしてもらうか決まっていないのに募集してしまう。お互いミスマッチしてしまう。結果的に常勤の人がやりきれないことをやらされることが多い。ただ、役所の仕事を手伝うだけ。非正規社員みたいな感じ。
- 若者には、地方で事業をやりたいなら、事業の準備をして行った方が良い。やることも明確にした方がよい。その自治体も残らないかもしれないのに、役所の手伝いを3年間するのは、正直無駄。若い人にとっては3年間、なんのメリットもなく、無意味な作業をさせられてしまい、業務経歴としても大したものにならない可能性もある。税金をもらって何かやるということだけ、身についてしまう恐れがある。
- 地方に貢献する人材になるために、まず何をやればよいか?地方のものを売る、営業するということをやった方がよい。人生でもっともつけた方が良い力は「営業力」
お、次は地域おこし協力隊の話。もとくらの地域おこし協力隊特集はこちら。 #ck02 :暮らしと本音を知りたくて。【地域おこし協力隊】への15の質問、始めます。 | 灯台もと暮らし https://t.co/dGfuVZM4Oa
— 鳥井 弘文 (@hirofumi21) 2016, 2月 13
北海道について
眠くなってきた時間です。いつまで話し続けるんだ、この2人は。めちゃ面白いけど。
- JR旭川駅めっちゃ豪華。1日の本数 函館に行くメインの線でも多い時で1時間に4本、少ない時は1時間に1本。なのに600億円かけてつくった。
- 人口減で自治体は消滅するといっても、北海道の豊かな自然は後世までに残していかないといけない、大事な資源。これらを残していくためにはどうした方が良いのか。
- 観光産業が伸びきらない。海外の富裕層だけでなく、ボリュームゾーンにもしっかりと訴求していくことが必要。
- ちきりんとしては、最近都心は死ぬほど暑いので、真夏の間だけ北海道に会社を移動させるというニーズはあると思う。家具等が全て完備されたマンションをちょっと裕福な都心の居住者に月額20万程度で貸し出すことも割とニーズがあると思う。
- こういう取り組みを産業化するには営業力のある人が必要。地元の人にはあまり価値のないものだけど、都心の人にはとても価値あるものであるものが多い。これに気付けないのは、マーケット感覚の欠如。
★★★
この他にも色々と話されていて、青森の話に移った段階で、聞くのを断念。
というのも、冒頭にも書いたけど、木下さんの他の記事でも同じようなこと書いてありそうだったので、、、
例えば、
とか見れば、似たような話は結構書かれてあると思います。
★★★
この2人は、かなりリアリスト。事業性や効率性を考えないと、地方再生なんてあり得ないと考えていて、話がとても面白かった!
自治体っていのうは、まちづくりに関して事業性をかなり無視したことをよく言ってきます。これが住民が求めていることだ!とよく分からない正義を振りかざしてきます。にも係らず、右に倣え主義で、結局ありきたりなまちづくりに終始することもしばしば。。。
コンサルとしては、この右に倣え的な感じをどうにか払拭するような提案をし、どうにか自治体側にやる気を出させる、納得させる術を身についていかないとなと改めて思いました。
また、正直そうは言っても人の気持ちを変えることは難しいので、小さくて良いので、自分で身銭切って、まちづくりに貢献できることをしていきたいとも、改めて思いました。