この間、残業帰りにヤケになって、Twitterで建築業界の仕事がなぜ残業が多いのかについて色々と考えながらつぶやいてみた。
建築系の仕事がなぜ残業多いのか?
①基本的に残業が多いということが自社他社共に当たり前になっている。(特に上の代で)
②規模が大きいと数億、数十億が動くプロジェクトなので、工期の遅れは許されなかったり、早期の土地活用が求められる。(さっさと土地活用して収益を上げたい)— こーたろー (@kotaro_qiq) 2016, 1月 28
③規模が大きいと、関係者が膨大になり意見調整に物凄く時間がかかる
④なんだかんだで、その地域ごとに正解は異なるため、他の地域の解を流用しにくい
⑤規模が大きい=代表企業自体の規模が大きく、社内稟議に時間がかかる
— こーたろー (@kotaro_qiq) 2016, 1月 28
ここでは、もう少しこれらのことについて掘り下げて考えてみたいと思います。
ただ、残業をなくす解決策はなかなか思い浮かばない。。。
基本的に残業が多いということが自社他社共に当たり前になっている。
建築業界にいる人は、大抵が学生時代から建築学科に通っている人です。(ディベロッパーとかは違うと思うけど)
もうこれは散々思うのですが、建築学科って、なぜか徹夜当たり前、大学も24時間解放されていて、学校に泊まることが当たり前になっているんですよね。
で、それについて先生も何も言わない。むしろそれが当たり前になっているし、学生も徹夜で学校に泊まることがもはやかっこいいとさえ思っているふしがある。泊まらないやつは頑張ってない、あいつはダメだ、と思っている奴さえいます。
これ、会社に置き換えて、普通に考えたら、ただのブラック企業ですよね?
建築業界にいる人の大半は、学生時代から残業体質が身についてしまっているんです。
だから、実際に社会に出ても、そういう風に仕事してしまう。この業界自体がそういう雰囲気なんです。そして、それが問題だとも思っていないことさえ多い。
「やりがい」
それだけで、この業界は持っているところがあります。
実際、かなり残業は多いですが、やりがいはあります。そりゃそうです。自分が思い描いた街や建物が、数年したら実際に形になる。
建築業界以上に物理的に大きいものを形にする業界はほぼないでしょう。
建築ほどに物理的に大きいものでぱっと思い浮かぶのは、ロケット開発とか、レジャーランド開発とかかな?(物理的に大きければ良いわけでは決してないと思いますけどね。ただ、物理的にデカイものをつくるというのは人としてどこか憧れみたいなものがあると思うんですよね。)
じゃあ、残業しまくりでOKかというとそうとは思わないわけで、、、
というのも、このまま残業が当たり前という雰囲気の業界になんて、これからの時代、そうそう人は入こないと思うんです。
つまり優秀な人は建築業界になんてこなくなってしまう。
今の建築業界の実情は、人材育成、発掘の面からはっきり言ってかなり崖っぷちの状態に立たされているとさえ、僕は思っています。
規模が大きくて、早期の土地活用が求められたり、工期の遅れが許されなかったりする。
例えばですが、20haの土地をずっと保有する。何も収益が生まないこんな馬鹿でかい土地を保有していたら、固定資産税ばかり莫大にかかって、会社に何も恩恵をもたらしませんよね。
20haは言い過ぎですが、デカイ土地を持っていたら、さっさと活用する。塩漬けしておくなんて、勿体ない。これは普通に考えれば当たり前の論理です。
そのデカイ土地に、1戸あたり、5,000万円、500戸のマンションをつくって、完売したら、それだけで、単純に250億円もの収益を生み出すのです。
そりゃさっさと土地を活用したいですよね。検討ばかりしていて、何も進まなければ、その分の人件費もかかるし、とにかく早く活用したいわけです。
規模が大きいと保有リスクがとてもある。だから早く手放したい。この論理はどうしようもありません。
せめて、地域に有用な土地活用を考え、認められれば、それまでにかかった固定資産税は還付してもらえるとかの制度があれば、良いんですけどね。
規模が大きいと、関係者が多くなり、意見調整に長い時間がかかる
六本木ヒルズは、2003年に開業しましたが、ここの開発の計画はいつからはじまったかご存じでしょうか?
1984年です。
建物が建てられるまでに、約20年の歳月がかかっているんです。
なぜか?
ざっくり言うと、ここを開発するためには、元々この土地の地権者が400人ほどいた。彼らの合意を取り付ける必要があり、その意見調整にここまでかかったのです。
他にも時間のかかった要素はあるでしょうが、六本木ヒルズに限らず、この関係主体の意見調整ってのは非常に厄介なのです。
この関係主体の数が多ければ多いほど、いろいろな人の意見を聞かないといけないので、スーパー時間がかかる。
本当に人っていろいろな人がいるんだな。と思い知らされます。プロジェクトに恵まれないと人間嫌いになってもおかしくない。
一方で、上述したように早期の土地活用が社内では求められているから、もうガツガツ働かないと間に合わないわけです。結構無理ゲーですよ、これ。
そして余裕がなくなってくると、設計事務所とかコンサルに、「明日までにお願い」とか金曜夜に「月曜までお願い」とか急な作業を頼んでくるわけです。
代表企業内の社内稟議に時間がかかる
早期の土地活用が求められるといっておいて、なんですが、社内稟議にめちゃ時間がかかります。
担当から課長に上げ、部長に上げ、役員に上げ、と何回上げるんだと。
これがスムーズにいくのであれば、良いですが、大抵スムーズに行きません。課長に上げ、担当に戻り、また課長に上げ、部長に上げ、また担当に戻り、、、、、エンドレスで、上げたり下げたりしてます。
小さい会社であれば、担当レベルが意思決定を持って、ずいずい進むこともあるのでしょうが、大抵、大きい土地であればあるほど、大企業の案件であることが多いので、その分社内にはどこで意思決定するんだ?というくらい人が大勢働いていて、社内稟議にとても時間がかかります。
しかも、大抵社内稟議を通す過程で、いつの間にかつまらない構想になっていることが多々あります。
上述したように課長、部長、役員へ上げたり、また担当に下げたりするのを何度も繰り返して、結果として良いものができれば良いのですが、大抵そういう過程で、当初尖っていた案が、段々と削られて、丸みを帯びてきてしまう。要は、つまらないものになってしまうことが多々あります。
部長クラスまで行くと、現場の熱のようなものがないわけですよ。担当レベルではあった熱を持った提案。それがどんどん上に上げていくと冷めていくんです。当初は、結構夢があるような案だったのに部長が役員に説明する頃には、なんてことない普通の案になってたりします。
これが良いのかどうなのか、意見が分かれるところでもあると思いますが、まだまだ青臭い僕は、なんだかな〜といつも思ってしまいます。
なんだかんだで、その地域ごとに正解は異なるため、他の地域の解を流用しにくい
まあ、これはその会社や人のスタンスにもよると思います。
ただ、真面目にまちづくりを考えている会社、人であれば、他の地域の解(ここでは、デザインや建物の形状、配置、コンセプトを指すことが多いかな)を流用するなんて、なかなかしないですよね。
もちろん、経験、ノウハウという目に見えない他のプロジェクトで得たものは、また次のプロジェクトで自然と活かされていくものですが、上述したデザインや建物の形状、配置、コンセプトのようなものは流用しにくい。
そして、突き詰めて考えるとどこまでも考えられちゃうものなんです。
ただ、時間をかければ良いものができる。とも思いません。
限られた時間の中で、集中して取り組めば、残業は減らせると思いますし、こういうデザインや建物形状、配置、コンセプトというのは、これまで自分が培ってきた経験やノウハウをいかに組み合わせるか、ということでもあるので、常日頃からアンテナをはって、いろいろなものを吸収しておくと、作業スピードが早くもなります。
この点で残業が多くなってしまうというのは、単に自分の能力不足という面、または時間をかければ良いものができると信じ込んでいる面があります。
なので、自分で書いといてなんですが、これまで挙げてきた課題とは違って、解決はある程度できる課題ではあります。
★★★
ここまで、書いてきましたが、僕は別にこの業界がダメだと言いたいのではありません。
とてもやりがいがある面白い業界であることは確かなのです。
ただ、やはり忙しい。
どこか自己犠牲を払ってまちづくりや建築をつくらないといけないところがあり、それはどうなのか?といった疑問があることも確かです。
ぶっちゃけ、リアルが充実していないと良いまちや建築なんてつくれないと思うんですよ。
なんで、料理も満足にしないような、家に寝に帰るだけの人間に、まちや住まいをつくってもらわないといけないんだ?たまにある休日は疲れ果てて、ずっと寝ている人になんで商業施設なんてつくってもらわないといけないんだ?
僕がお客さんだったら、確実にそう思いますよ。
ただ、この業界に残業が多い原因は、上述したように置かれている環境によるところが大きいです。
これを解決する方法としては、業界の仕組みやビジネスの仕組み、会社の意思決定の仕組み、いろいろなものを変えないといけません。
僕個人としては、今のところ以下のように思ってます。
やっぱ、元も子もないけど、この業界残業多いのは仕方ないよな。解決策が全く見当たらん。
これを解決する唯一の策は、身の丈にあったまちづくりができる環境に行く、またはそういう環境をつくること。
要は関係主体が少なく意思決定が迅速で、最低限の生活費が稼げる環境ってことなんですが、、、— こーたろー (@kotaro_qiq) 2016, 1月 28
あと、残業多いのは解決できないので、他の面で解決することはできる。例えば、「生活するように働く」的な企業とかね。残業多い代わりに、半袖半パンで出社OKだったり、仕事中音楽聞きまくってよかったり、遅刻してもとがめられなかったり、とかね。
— こーたろー (@kotaro_qiq) 2016, 1月 28
僕としては、ゆくゆくは「身の丈にあったまちづくりができる環境に行く、またはそういう環境をつくること。」を目指して、日々色々と考えています。
まあ、この辺りの話については、また別の記事で書けたら、、、
他にも少しでもこの業界が良くなるヒントがあれば、、、そう思い、日々考え続けている次第です。