※2017.11.20に追記
※2019.04.22に追記
都市計画やまちづくりを仕事にしたいけど、どういうところに行けば何ができるのかイマイチよく分からない方も多いと思います。
って言うのも、最近OB訪問などを受けていて、学生の話を聞くとそう思うんですよね。ってかぼくも学生時代はよくわからんかった。
なので、ぼくなりに数年間働いてきて、どの業界に行けばどういう仕事に関われそうなのかを簡単ですがまとめてみました。
と、その前に、都市計画とまちづくりの定義、、、
都市計画とまちづくりを一緒くたにしてしまっていますが、ここでいう都市計画というのは、駅前の再開発や区画整理等のある程度規模の大きいハードの整備や都市計画マスタープランの策定、用途地域の変更等の上位計画の策定や法規制に係ることを指すこととします。
一方で、まちづくりというのは、住民と一緒に何かを作り上げたり、大規模なハード整備の伴わない商店街や地域の活性化等を指すこととします。
表で表すとこんな感じをイメージすれば良いかと。
都市計画 |
まちづくり |
上位概念 |
下位概念 |
面的 |
点的 |
政治・政策 |
市民活動 |
規制をつくる |
規制を守る(時に壊す) |
マスタープラン |
ワークショップ |
組織 |
個人 |
いずれも何かの定義に基づいたわけではなく、ぼくの経験的になんとなく決めた定義です。
ってことで、以上の点を前提に、どんな業界があるのか簡単にまとめたいと思います。
不動産(ディベロッパー)業界
土地を取得する。そしてそこに付加価値のある建物をつくる。そしてその土地・建物を売る。場合によってはその建物の管理をする。
簡単に言うと、ディベロッパーの仕事はこういうことです。
土地を取得するところから建物を売る、管理するところまでが仕事のため、経理や営業、企画、開発や設計、管理など社内の部署は多岐にわたります。
部署名はそれぞれの会社で微妙に異なりますが、基本的に営業や企画部署が土地をとってきて、どういう建物をつくるかの方向性を定めます。行政からサウンディング(使われていない公共用地をこんな用途で使える?と土地活用する会社が決まる前に聞くこと)を受けたり、土地所有者に土地を売ってもらうために頭を下げたりなんてことをしながら、土地を取ってきます。六本木ヒルズなんて、地権者約400人に頭を下げて、土地を所得するのに十数年もかかったと言われています。
土地を取る時には、すでに都市計画で定められているその土地に建てられる用途を睨みながら、何をこの土地に建てることができれば収益をあげることができるか考えます。
土地を取得することができれば、次は開発の計画を建てます。開発のコンセプト決めたり、そのコンセプトに基づいて、どんなテナントを入れるかなども考えていきます。
そして、それとはオーバーラップする形で設計も行います。ただ、この業界の設計部署は、組織設計事務所、ゼネコンのそれとは違い、あまりがっつり設計をするような部署ではないことが多いです。基本的には設計事務所などに外注することが多く、自分たちの建てたい建物のイメージを組織設計事務所、ゼネコンに提示するような、そんな部署であることが多いです。
そんで、建物が終わった後の管理!みたいなこともしたりします。管理というとつまらなそうですが、最近では管理、マネジメントの部分というのは結構重要視されるようになってきていて、たとえば分譲マンションも建てて終わりではなく、その後に何か共用部でイベントなどを行い、居住者のコミュニティ形成に配慮するようなところも、ある種のマンションの付加価値として取り組む企業も増えてきています。どっちかって言うと、最初に定義したまちづくりのような業務ができるのが、この管理部署ですね。
難点なのが、部署が多岐に渡るため、基本的に同じ部署に何十年もいるなんてことはないそうです。割と行政みたいに3、4年に一度は部署異動があると聞きます。
ってことで、ディベロッパーのこの部署の仕事がしたい!と思って入っても、まずその部署に入れるかどうか、またそこの部署に入れてもずっと居続けられるかはわかりません。
就活の時も、ディベロッパーに入りたければ、この部署のこの仕事がしたい!とあまり強く言わないほうが良いのかもしれませんね。興味は明確に伝えたほうが良いかもしれませんが、その1つに固執するのではなく、割と柔軟に仕事をしていけることもアピールすると良いのかもしれません。これだいぶ憶測で書いてます。ぼくは興味が割とはっきりしていたのでディベロッパー受けてませんし。
ただ、この手の本は読んで、業界研究を進めた方がいいですね。
ゼネコン
ゼネコンと言っても一部のゼネコン、俗に言うスーパーゼネコン(鹿島、大成、大林、竹中、清水)限定(厳密には違うけど)ですが、基本的に都市計画部署あるいは都市開発部署的な部署があります。こういう部署に行けば、都市計画の仕事に携わることができます。
ただ、まちづくり的な仕事をすることはほとんどないです。スーパーゼネコンが請け負うような金額のまちづくりなんてほぼあり得ないですし、ゼネコンとして最も旨味のある「施工」まで仕事を展開することが難しいからです。
そう、ゼネコンの都市計画部署は、いかに施工まで繋がる仕事を取ってくるかが一番の仕事です。そういう意味では結構営業っぽい一面があります。一部のゼネコンでは自ら土地を取得して開発するって会社もありますが、基本的にそういうディベロッパー的な仕事はごく稀です。
スーパーゼネコンの施工までつなげるというくらいだから、基本的にビッグプロジェクトが多いです。オリンピックの施設建設なんてほとんどスーパーゼネコンですよね。
ビッグプロジェクトなので、やりがいはとてもありますが、その分かなり時間のかかるプロジェクトばかりです。50代になっても関わったプロジェクトが2、3つなんてこともザラにあるほど。
もちろん、施工までに繋げる営業っぽい仕事とはいえ、自社の強みである施工性を踏まえつつクライアントと相談し、コンセプトやゾーニング等を考える等、設計の前段階の開発計画をつくったりもします。
ひとつ難点なのは、このスーパーゼネコンの都市計画部署って、公には新卒募集していないことが多いです。HPに書いてあるのは、基本的に設計や施工、事務職ばっか。
どうしているかというと、ある一定以上の大学に対して直接募集をかけています。都市計画部署は他部署と比べてそこまで人数がいないので、少数精鋭ということなんでしょうか。それなりの大学に通ってないと、これらの部署に応募することもできません。その大学のラインは正確には言えませんが、早稲田慶応レベル、旧帝大レベルの大学生しか受けている人を見たことがないです。そこは要注意。あとは、基本的に修士卒が多いですね。
ってことで、もし、上記レベルの大学ではないけど、都市計画の仕事をしたい人は、がんばって院試で上記大学に入るしかないです。院試は大学受験よりは遥かに入りやすいので、がんばれば入学できると思いますよ。
大まかにこんな仕事がゼネコンにおける都市計画部署のイメージ。
組織設計事務所・コンサルタント
上記、不動産業界やゼネコン業界、場合によっては行政から、設計や開発計画の実務的なことを頼まれます。
なので、実際に計画や設計に対して検討を行い、手を動かすのはこの業界であることが多いですね。最もモノづくりをしている!と思える業界でもあるのがこの業界。
建物のコンセプトや建物のゾーニング、基本設計、実施設計、場合によっては建物後にどのような利用をしていけば良いのか、、等いろいろなことを検討し、クライアントである不動産業界やゼネコン業界、行政なんかに提案することができます。
ただ、悲しいかな。あくまで下請けという立場であるのがこの業界の痛いところ。実際に金を出すのはクライアントなので、決してクライアントの言いなりにはならないのですが、自分たちが本当に実現したい提案はなかなかそのままでは通りにくいことが多々あります。
それは、土地のポテンシャルから予算枠、担当者の性格や相性等、さまざまな要因で起こるのですが、この業界にいる方々は少なからず、こういった本当に通したい提案が自分たちのよくわからないところで却下され、結果丸みを帯びたものに落ち着いてくることに悩んでいると思います。
あとは、会社の規模やその会社の業務範囲にもよりますが、商店街や地域活性化等のまちづくり的な仕事を受けたりもします。これは行政等からの発注が多いですかね。
また、用途地域の変更や都市計画マスタープランなどの上位計画の策定などもこういう業界で行っていることが多いです。
いろいろな仕事をたくさん経験できるのはとても面白い業界だと思います。その代わり激務であることが多いですけどね。
土木コンサルタント
上記が、組織設計事務所に紐づくコンサルタントであるのではなく、基本土木を生業としたコンサルタント事務所でも都市計画を行なっています。
上記は基本的に建築から派生をして、都市計画を考えますが、こちらは橋梁、景観、ランドスケープ、大規模造成などを生業とし、そこから派生して都市計画を含めて考えることが多いです。
ぼくの印象値ですが、土木コンサルタントのつくる都市計画プランの方が、割と地に足がついたものが多いです。組織設計事務所に紐づく都市計画コンサルは、もう少し自由な感じ(悪く言えば、少し地に足がついていない)。
どちらがいい、悪いではなく、一長一短だと思いますので、ざっくりコンサルタントで都市計画に関わりたいと思っている方は、一度設計事務所に紐づく都市計画コンサルタントと土木コンサルタントの仕事を比較してみてもいいかも。
電鉄業界
電鉄系は基本的に、鉄道業と都市開発業で採用時に分けられてると思うので、都市開発業の方に行くことができれば、都市計画やまちづくりの仕事をすることができます。業務内容的には、ほぼ不動産業と同じだと思います。
ただ、電鉄が強いのは駅周辺の土地を多く所有しているということ。
ですので、そのまちをどんな特徴のまちにしていこうか、自社の沿線にいかに人口を増やそうかという、かなり大きな視野で都市計画やまちづくりを考えることができます。
なので、駅前の再開発などのビッグプロジェクトを手がけるのはもちろん、いかに周辺の施設や住宅と連携して、自社の沿線から逃れられないように住み替えさせていくか?等のソフト的な仕組みも考えていくこともしていたりします。
たとえば、こんなのとかね。
リノベーション業界
最近で言えば、この業界もチェックしておいた方がいいでしょう。
仕事的には、ディベロッパーで言うところの土地の取得のフェーズが、建物・住戸の取得となった感じ。それらを取得したら、あとは企画し、設計、施工、販売、運営と行っていきます。
リノベーション業界は、その会社で、上記の一連の流れのどこまでを担うか、全然異なるので、自分はどこの部分を仕事として担いたいのか?また、会社としてどこまでを行っていて欲しいのか?をしっかりと考えて、会社を見つけた方がいいです。
たとえば、
建物の取得⇒企画⇒設計⇒施工⇒販売⇒(運営)
と建物の取得から販売まで、すべて自社でやるような会社もあれば、
建物の取得⇒企画⇒(設計)⇒(施工)⇒販売⇒運営
と基本的にプロデュース業に寄っていて、設計や施工は外に任せるような会社もあります。
※()は外注
また、リノベーションする規模も会社によってさまざまで、
住戸単位でリノベーションするだけの会社
もあれば、
1棟まるごとリノベーションする会社
もありますし、
住宅のリノベーションが主な会社もあれば、店舗やオフィスのリノベーションが主な会社、またはオールラウンドにこなす会社もあります。
比較的大きな建物をリノベーションできる会社はバックに電鉄会社がついていたりしますね。電鉄は沿線の価値創造、自らの資産の更新などを図るため、結構リノベーション会社を傘下につけていたり、もしくは事業連携していることが多いので、よく見ておいた方がいいでしょう。
たとえば、こんなんとかね。
リノベーション業界の話をよく知るためには、以下の本を読んでおくことがおすすめです。
その他
他にもシンクタンクでも都市計画に携われます。国の施策検討の段階で調査研究に関わっていたりすることがありますね。
あと、その他に入れてますが、行政。都市計画やまちづくりといったら、この行政がもうメイン中のメインですね。この行政がやる気かどうかでその計画が成功するかどうかが半分は決まってくるってくらい、重要。本当は一番クリエイティブな人に入ってもらいたい業界ですが、そうは全くなっていないのが悲しい。。。
また、広告業界なんかも関わっていることがあります。これが関わるのは地域再生のコンセプトづくり等の川上の部分で関わることが多いですね。
★★★
ざっくりとですか、こんな感じで都市計画、まちづくりができる業界をまとめてみました。今後もこれについて記事はリライトしていく予定。
最後に、都市開発に絞らず、まずは建築関連の企業全般に関して把握したい人はこの本がおすすめ。
参考になれば幸いです。
おしまい!