ものまちぐらし

ものまちぐらし

設計事務所で働く、都市計画コンサルタント兼一級建築士。まちづくりのことや激務の中でのちょっとした生活の楽しみについて書いてます。

MENU

建築学科を受験する大学受験生に伝えたい。「建築」という学問とは?

f:id:kotaro_qiq:20160418205436j:plain

大学受験の季節。

 

に投稿しようと思ったけど、すっかり忘れていたこの記事。

 

ただ、来年の大学受験生、またはこれから建築学科に入学する新大学生に知っておいてもらいたいので書きます。

(もしくは大学3年から学部学科を決めるような大学に通っているひとにも当てはまるかも。)

 

建築学科に行きたいと考えている受験生の方々は、理系の学部学科の中で行きたいところはどこかなーと考えるときに、

 

機械うんたら学部!電気ほにゃらら学部!に行こうかな〜

 

なんかオタクがいっぱいいそう。てか女の子とかいなさそう。

 

とか

 

化学ちょめちょめ学部!物理ふむふむ学部!に入ろうかな〜

 

なんかオタクがいっぱいいそう。てか女の子とかいなさそう。

 

とか

 

そんなこと考えて、

 

あ、「建築」か。何かかっこいいなー。建物つくるとか面白そう!女の子にモテそう!

 

なんて思いで、建築学科を志望していませんか?

 

そんな人はちょっともう一度立ち止まって考えてみてください。

 

まず、あなたは、好きな建築や建築家について語れるでしょうか?

 

ぼくは大学入学当初、安藤忠雄程度しか建築家の名前は知りませんでした。

 

本当にただただ、建物をつくる、街をつくる、そんな学問が単純に「面白そう」

 

と思ったからっていう大した理由もなく入学してしまいました。

 

幸いなことにぼくは、建築という学問にハマったわけですが、


周りでぼくのような単純な動機で入ったひとの中には建築という学問に馴染めず、挫折したひとも多く見てきました。

 

なので、このように、少しでも動機が不純、もしくは直感で建築学科の志望を決めた

 

そんな僕のようなひとに贈る、建築学科の良いところ、ある程度知っておいたほうが良い現状をまとめます。

 

 

良いところ!!

ハマるとめちゃくちゃ面白い!建築という学問!

建築学科は理系の学問ですが、文系っぽいところもあります。その文系っぽい部分を理系っぽくロジカルに解くのが建築なんです。

 

たとえば、

・人と人との関係はどのようにつながるのか?

・外と内の境界ってのは一体何で規定されるのか?

・景観の善し悪しって一体何で決まるの?

 

なんてことについて真剣に考えます。

それはもう、時に社会学的に、時に空間的に、時に情緒的に考えます。

 

 

人と人との関係で言えば、

空間的に何となく人の気配を感じられる程度の空間構成が人と人をつなげるための第一歩と考えるかもしれませんし、

プライベートとパブリックな空間をしっかりと分け、ソフト面の取り組みをするほうが、人と人はつながるのかもしれません。

 

そこに明確な答えはなく、自分の考えについていかにロジカルにコンセプトや空間設計の意図を伝えられるかが大事になってきます。

なので、

真実はいつも1つ!

と考えている名探偵コナンみたいな人には合わないかもしれません。

 

要はいかに自分の考えを屁理屈こねくり回して、真実をいくつもつくってしまう学問なんです。

 

 

大きいスケールで物事を考えることができる

建築学科で学ぶのは、ただ単に建築単体をつくることに収まりません。

 

建築をつくるうえでは、その地域との関係やつながり、

その建築をつくるうえで、社会的な課題をいかに解決できるか、

など、授業や研究室のプロジェクトなどを通して、大きなスケールで物事を考えさせられます。

 

そして、その建築の用途によっては、その用途にまつわるいろいろな社会的な問題、地域によってはその地域の課題、その課題を通した日本全体の課題などについても学ぶことができ、社会のことをよく知ることができますし、よく知ろうと思うようにもなります。

 

これ、他の理系の学科では、基本的な専門的なことに特化して物事を学ぶことになるので、関連分野周辺の知識は身につきますが、社会全体のことまでなかなか考えられないと思います。

 

そういう意味でも、建築学科は割と特殊な学科です。

 

街中を歩くのが楽しくなる!旅行先にも困らない!

建築を学ぶ一番の利点は、ぼくはこれだと思ってます。

とにかく、どこに行っても結構楽しめるんですよ。

 

これ建築に興味ない人だと、

やれレジャー施設や

やれ温泉

なんてものがないと旅行なんてつまらないと思うかもしれませんが、

 

建築に興味を持てると

あれほど修学旅行でつまらなかった

神社やお寺をはじめとした歴史的建造物を見たり、

美術館や博物館、ギャラリーに行ったり、

有名建築家が建てた、オフィスや教会、公共施設を行ったりと

旅行先に困りません。

 

ただのまちを見ているだけで、結構おもしろい!

これ、だいぶ人生豊かになっていると思うんですよね。

 

 

知っておいて欲しいこと!!

徹夜をして喜ぶ連中の集まり!

これは、覚悟してください。

もう徹夜めっちゃします。

というか、徹夜してナンボ、学校泊まって課題やる俺かっこいい!みたいな人がめっちゃいます。

 

ぼくは、そういう雰囲気があまり好きではなかったので、極力家に帰宅するようにしていましたが、、、

 

こういう雰囲気が大学時代から染み付いてしまうので、社会に入ってもこの傾向はあまり変わりません。つまり残業が多い。

 

建築業界の残業を減らすには、まず徹夜ありきで課題をやることをやめさせるところから始めるべきだと思うんですけどね〜

 

建築はある種、時代から一周遅れている学問

これ、気にしない人は全く気にしないと思いますが、個人的にはとても大切なことだと思っているので、書いておきます。

 

建築をつくる技術ってのは、基本的に他の学問の知識の寄せ集めだったりするんですよ。

建築ってのは決して発明はしないんです。

新しい世の理を見つけ出すようなもんでもないんです。

 

その点、他の理系の学問と明らかに赴きが異なっています。

 

どういうことか?

化学や物理は新しい世の理を見つけ出す学問。ニュートリノとかそんな類。

 

機械とかは世を変革するものをつくる学問。画期的な機械、製品を生み出すことができれば、また、そのキーパーツをつくることができれば、日本を変えられるかもしれない。

 

医療についても日進月歩。日々人間が健康で生き続けられるために新たな薬や医療技術が開発されている。この開発のおかげで大勢の命が救えるかもしれない。

 

けど、建築は違うんですよ。建築だけは今の世の中にある関係性や物事を、いかに色々な視点で組み直すか?を考える学問なんです。

 

建築のデザインは全て、ミース、コルビジェ、ライトに起因すると言われています。レムコールハウスがそこに食い込むか否か。

 

建築のデザインってのはある種やり尽くされているんです。あとは、その数あるデザインをどう組み直すか?

そういう意味で、建築は何も発明はしません。

ぼくは、他の理系の学問をやったことがないのでわからないですが、たぶん他の学問とは使う頭が違うと思います。

 

もしかしたら、自分は何かものづくりや発明をすることの方が好きなのかもしれない。

そう考えた人は、一度建築学科に入るかどうか、考えてみた方が良いです。

 

建築学科卒の進学先

現実的な話です。

卒業後の進路。一体いくら金は稼げるのか。

 

はっきり言って、建築学科を卒業して、そのまま建築関連の道に進もうとするのなら、そんなにお金は稼げないと思った方が良いです。

 

自分で事務所を主宰し、ある程度の数あるプロジェクトを引き受けるようにならない限り、建築学科卒ではあまり稼げる職業に就くことはできないでしょう。

 

一部の大手設計事務所とか、スーパーゼネコンとかであれば、ある程度の給料は保障されますが、労働時間がべらぼうに長いため、正直時給換算したら、そんなに稼げる職種ではありません。

 

また、大手のディベロッパーであれば、割と稼げるかもしれませんが、建築学科卒のひとが優遇される職種ではないのでご注意を。

たぶん20人入社できるとして、そのうち建築学科卒の人なんて2、3人くらいではないでしょうか。基本的に文系のひと中心なんです。

受験生の段階で明確にディベロッパーに入社したいなんてひとがいれば、建築学科ではなく、文系に進み、有り余った時間で、ひとが真似できないような経験を積んだほうが良いです。

木下斉さんなんて良い例ですね。

 

アトリエ系の事務所にいったら、もう20代は薄給でひたすらに頑張るしかないでしょう。もはや芸人の域ですよ。下積み時代ってやつ。完全に最低賃金とか無視している感じ。

 

 

ぼくは、この業界に身を置き、たまに出会うひとで

「このひとは、この業界にいなければ、もう少し稼げるひとだったんだろうな」

というひとがいたりします。


ってことで、そういうことは覚悟しといた方が良いです。

 

ざっくばらんに書き連ねてみたけど、結局迷ったら、やはりそこは直感で決めるしかないと思います。

 

ただ、直感で決めるにしても、このくらいの事前情報は知っておいて良いと思います。

 

ではっ!!